オコエ便り
真魚八重子

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第4回



 コロナ禍の真っ只中、フリーランスのわたしは連日家にこもっている。執筆仕事に専念すれば良いものの、DVDを観たりパソコンで作業をしたりという、雑念と結びつきやすい環境ではつい怠けて遊んでしまいがちだ。特に最近はモバイル版のシューティングゲームにはまってしまって、暇さえあれば夜遅くまで没頭してしまう。すると猫は夜型であるため、オコエが夜更けにもニャーニャーとわたしの周りで騒ぎたてるようになった。今までは夜が更ければ一匹で、静かな暗い居間で過ごしていたのに、日付が変わって数時間経っても飼い主がそばにいるのだから、猫が興奮するのも当たり前だろう。

 ただ、オコエにとってはちょっとした差が不満らしく、この一か月で行動が変化した。これまでDVDやテレビを観ているときは、オコエが甘えてきたら途中で止めて撫ぜ回していたのに、オンラインゲームだと戦いの終了まではスマホから手が離せない。だからゲームの銃声が聞こえてくると、オコエはそれが合図のように、鳴き声をあげて「構って」とアピールをするようになった。無視を続けるとさらにわたしの膝にグイっと手をかけて顔を覗き込んできたり、脚とテーブルの狭い隙間に入り込んで見上げてくる。これまでは鳴き声をあげればわたしが即座に撫ぜてくれていたのが、呼んでも急に無反応になってしまったのだから、確かに不審だろうし可哀想だ。

 いままでオコエが膝に乗ってこないことについて、ネットで「子猫時代から人に甘えていないと、成猫になってからでは無理です」という記事を読んで諦めていたけれど、今日はゲームをしている最中に、とうとうオコエがわたしの腿の上に乗ってきて座り込んだ。別に冷たくして好意を持たれる気はなかったのに、計らずも「押してもダメなら引いてみな」になってしまった。初めての出来事が嬉しかったので、オコエが自分から降りるまで我慢した。そのせいで、最後は足首から下の感覚がなくなるほど足が痺れてしまったけれど、そのビリビリした感覚も飼い主冥利に尽きると思う。

 まだこの時期、時間帯によっては寒いのでストーブをつけている。机に向かってゲームをしている背後に電気ストーブをつけておくと、物音を立てずにやってきたオコエがストーブ前を陣取り、わたしにピタリと寄り添って暖を取っている。そうやって眠っているオコエに触ると、「脱水症状になるんじゃないか?」と心配になるほどボカボカに温まっている。ゲームに夢中になっている間に、オコエがいつの間にかわたしのお尻にくっついているので、いることに気づかず姿勢を変えようとし、傾いで下敷きになりそうになった瞬間に、驚いたオコエが飛び出ていくことも度々だ。

「ゲームも楽しいけれど、オコエの方が大事だから、わたしがちょっとくらい振り向かなくても心配しなくてもいいよ」と伝えたい。でもその方法がないから、必死に鳴いてアピールしてくるオコエに、このゲームが終了するまで待っててねと念じる日々が続く。

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